議会報告
- 所得税法56条の廃止を求める意見書 '10年6月議会
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態度表明ー賛成ー (意見書提出者)
所得税法56条の廃止を求める意見書今日、我が国における中小業者は、地域経済はもちろんの事、日本経済の担い手としてその発展に大いに貢献する事業体となっています。そして、これらの多くは、夫、妻、あるいは子どもなどの家族の協働による自営業者が中心です。
ところで、所得税法56条では、「生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む事業に従事した時、当該事業から対価の支払いを受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の事業所得の計算上、必要経費に算入しない」旨を定めています。従いまして、税法上ではこうした家族従業員の給料は必要経費として認められていません。
この規定によって、事業主の所得から控除される家族の働き分は、配偶者が86万円、家族の場合は50万円が上限とされ、税法上、家族従業者にはこのわずかな所得しか認められていないため、社会的にも経済的にも全く自立できない状況に置かれています。たとえば、給与所得の公的証明が受けられないために、不測の事故に遭遇したような場合でも受けた被害の補償が適正に査定されないとか、罹病した場合の国民健康保険の適用に置いて給与所得者には認められている傷病手当や休業手当が受けられないとかの事態が生じるとか、その他の公的給付の面でも様々な差別的な不利益を被る事になるのです。
また、税法上では青色申告にすればこうした給料は経費として算入できますが、全く同じ労働で有りながら青色と白色で差をつける制度自体が、憲法の規定からして大きな矛盾をきたしています。そもそも税の申告は白色が原則であって、所得税法143条以下で言う青色申告は、課税庁側の裁量の内に取り込む事が目的で、課税目的と税務執行の便宜の観点から考案された制度である事は言うまでもありません。ですから、自主計算・自主申告が納税の原則でありながら、課税庁の承認のもとに青色申告を選択する制度となっているのです。
アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスなど、世界の主要国では「家族従業員の労賃を必要経費」とする事は当たり前で、我が国においても当然こうした制度に切り替える事が求められているものと考えます。
また、現行の日本国憲法に照らせば13条、14条、24条、25条、29条等々に悉く違反する事となり、当然改めなければならない問題です。従いまして、税法、民法、労働法やその他社会保障上でも、わが国経済の基礎をなす中小業者の家族従業員の人権を確立し、その保障の基礎をしっかり確立する事を求める次第です。
よって、国におかれましては、所得税法56条を速やかに廃止することを求めます。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成22年6月15日
奈良県磯城郡川西町議会